資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について
1. 現状分析
当社は単に損益計算書の売上や利益水準を意識するだけでなく、バランスシートをベースとする資本コストや資本収益性を重視した経営に努めています。
例えば、当社は、投資案件の取り上げにあたっては、投下した資金に対する収益力を表すROIC(投下資本利益率)が、資本コストと有利子負債の加重平均コストであるWACC(加重平均資本コスト)を、どれだけ上回るかを重要な判断基準としております。また、政策保有株式を保有する経済合理性についても、同様の方法により定期的に取締役会で検証を行っております。
当社の資本コストは、10年国債利回りを用いた「リスクフリーレート」、当社株式と株式市場全体の変動率を対比した「β値」、さらにTOPIX運用利回りを基準にした株式市場全体の「期待収益率」を用いた「CAPM」を基準としながら、その他「益利回り法」とも重要な差異がないかを確認の上、算出しており、前述の通り、投資判断の基準として、また、事業が越えなければならないハードルレートとして認識しています。
コロナ禍という外食産業にとって未曽有の苦難の時期から、食材を始めとした様々なコストが上昇局面にある現在まで、当社の資本収益性(ROIC、ROE)は一貫して資本コスト(WACC、株主資本コスト)を上回って推移いたしました。
これは、積極的な人的資本と設備への投資を行い、プロの技と、プロの味と、プロの誇りを持った当社従業員が、お客様に対して、より高い価値をご提供してきた成果と考えております。
また、当社は株主・投資者の評価が反映されたPBRについても、一層の向上に向け、エイクイティスプレッドの拡大、即ちROEを重視した経営の推進に努めております。
資本コストと資本収益性の推移
市場評価の推移
株主還元
現状分析による課題
ROIC、ROEは、WACC、株主資本コストをそれぞれ上回って推移しただけでなく、ともにコロナ禍で一旦落ち込んだ(2021年3月期)あと、その後、再び上昇基調に転じました。直近ではROEはコロナ禍前を大きく越える水準に達するなど、資本収益性に関しては十分な向上が見られます。
また、時価総額も同様に、直近ではコロナ禍前を超える水準に達しました。
しかしながら、PER、PBRの推移を見ると、ROICやROEと同様の上昇基調になっておらず、資本収益性の向上に比して、当社の成長性に対する市場の評価がやや追いついていないとの認識を持っております。
2. 計画の策定
当社は上記の通り、「資本コストや資本収益性を意識した経営」に努めておりますが、これを当社の各事業において着実に推進するため、当社の「中期経営計画」の中に具体的な施策として落とし込み、その遂行に全社を挙げて取り組んでおります。2024/4から、現在の中期経営計画に移行いたしました。
現 中期経営計画(2025/3~2027/3期)
部門 | 大目標 |
---|---|
営業本部 | 店舗のQSC レベルの更なる向上 |
人材育成・教育体制の構築 | |
生産性の向上 | |
FC営業部 FC契約管理部 |
FC事業の拡大 |
営業企画部 | ロイヤルカスタマーの獲得 |
キッチンカー(移動販売)事業 | |
海外事業の拡大 | |
製造本部 製造管理本部 |
品質保証への取り組み |
工場自動化(DXシステム導入) | |
物流省力化 | |
店舗開発部 | 全都道府県への出店を見据えた計画的・効果的な新規出店・リロケート、及び純増体制の確立 |
管理本部 | 資本コストや株価を意識した経営の実現 |
統合報告書の作成 | |
レピュテーション管理体制の構築 | |
人事本部 | 人材採用強化とインナー採用推進 |
人事DX | |
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 | |
情報サービス部 | デジタルの利活用 |
安心・安全なシステムの提供 | |
HRコンプライアンス対策室 | ハラスメント・不祥事の撲滅 |
- (注) 中期経営計画は年度毎に見直しの予定
中期経営計画(2025/3~2027/3期)大目標と主な施策
大目標 | 主な施策 |
---|---|
店舗のQSC レベルの更なる向上 | 料理品質・接客応対力の向上、衛生管理の徹底によりQSCレベルのさらなる引き上げを図り、より高い価値をお客様にご提供。 |
人材育成・教育体制の構築 | 調理スキル・接客応対力を向上させるための研修の実施、マニュアルのブラッシュアップ、外部コンサルタントの活用など、人材育成・教育体制の構築を図り、QSCレベルを向上。 |
生産性の向上 | 厨房レイアウトの効率化や人員の営業時間適正化などにより、業務効率を向上。 |
FC事業の拡大 | FC店舗のQSC向上を図るとともに、後継者対策及び社員独立制度と既存FCオーナー複数出店の推進によりFC事業を強化することで、工場出荷売上を増強。 |
ロイヤルカスタマーの獲得 | ぎょうざ倶楽部などの各種キャンペーンの実施やスマホアプリの活用により、顧客基盤を拡充することで、収益力を強化、安定化。 |
キッチンカー(移動販売)事業 | 能登半島地震被災地や老人福祉施設、子ども食堂などに赴き、餃子やラーメンなどを提供することを計画。こうした社会貢献活動に軸足を置きつつ、当社店舗のない地域での営業活動も検討。 |
海外事業の拡大 | 台湾事業の拡充とともに、新規出店地の検討を実施。 |
品質保証への取り組み | 工場にて品質保証体制を構築し、品質の安定化と向上を実現。 |
工場自動化(DXシステム導入) | 工場の生産、品質管理面でDX化を推進、品質の安定化と生産効率・労働生産性を向上。 |
物流省力化 | 10年先の店舗展開、労働力不足、ドライバー不足を見据えた持続可能な物流体制の構築。 |
全都道府県への出店を見据えた計画的・効果的な新規出店・リロケート、及び純増体制の確立 | 新規出店は東日本に重点を置き、西日本はリロケート(移転・建替え)を中心に推進、同時に効率的な物流体制の構築を図り、業容拡大を加速。 |
資本コストや株価を意識した経営の実現 | PBRの向上を目標として、IRや資本政策を計画的に推進。 |
統合報告書の作成 | サステナビリティなどの非財務情報を財務情報とともに投資家等に提供できる体制を整備し、統合報告書の作成・開示を検討。 |
レピュテーション管理体制の構築 | SNSによる情報の拡散等でレピュテーションリスクがこれまで以上に高まっている状況から、その運用について一定のガイドラインを設けるなど、管理体制の構築を図り、リスクの低減を実現。 |
人材採用強化とインナー採用推進 | 多様な人材採用施策を展開すると同時に、インナー採用の仕組みを整備してインナー採用も強化。 |
人事DX | 各種申請事務をDX化することで、迅速性、正確性、生産性を向上。 |
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 | 障害者の安定した雇用と安心安全な職場環境作りを実現するほか、プロジェクトチームを発足させて職場での女性活躍を推進。 |
デジタルの利活用 | DXの推進により顧客利便性を高めるとともに、業務の効率化を進めることで、当社従業員による価値のご提供を一層強化。 |
安心・安全なシステムの提供 | ホストシステム刷新とマスタ改善の実施、併せてセキュリティ対策を強化することで、システムの安全性を高め、リスクを軽減。 |
ハラスメント・不祥事の撲滅 | コンプライアンス及び従業員の人権尊重のため、ハラスメント研修等を通じてハラスメントを撲滅し、健全な安心な職場環境を確保。 |
課題に対する対策
中期利益計画の遂行により一層の資本収益性を高めるとともに、当社の今後の成長性に対する市場の評価を得るための施策を進めてまいります。
① 設備及び人的資本に対する投資の一段の強化
当社はこれまでも店舗・工場等の設備(DXを含む)と、従業員の採用・育成等の人的資本に多くの投資を行ってまいりましたが、今後はこれを一段と強化いたします。
次ページにキャッシュアロケーションをお示ししておりますが、今後は、当期に発生したキャッシュフローの全額を、成長投資(設備(DXを含む)及び人的資本等への投資)と株主還元(配当)に分配するように努めます(但し、次期以降への投資の期ずれ等がある場合は、その待機資金として、当期の現預金に滞留させることを行います)。
また、現在の現預金(2024/12末残高 349億円)については、その一部を借入金(同 55億円)の返済原資にするとともに、別途、活用を検討してまいります。
② IR・SRの強化
当社が目指す株主構成を明確にしてターゲティングを実施し、株主・投資者との効果的な対話を推進、ケースに応じて当社社長が対話に参加するなど、信頼関係の構築に努めます。
また、投資家視点での情報開示を着実に進めることで、当社の成長戦略の説得力を高めるとともに、マテリアリティ(重点課題)などの非財務情報の開示を拡充することで、株主・投資者からの中長期的な支持獲得を図ります。
それにより、株主資本コストの低減にも努めてまいります。
キャッシュアロケーション
3. 取組みの実行
当期(2025年3月期)は、新たに移行した中期経営計画(計画期間3年間)の初年度に当たり、毎月の経営戦略会議で、各目標に設定したKPIに対する進捗度を確認しております。
進捗が遅れている目標については、それをバックアップする施策等を検討し実施することにしておりますが、これまで各目標とも概ね順調に進捗しております。
また、中期経営計画は、初年度が終了した時点で、計数面の充実を図るなどの見直しを行う予定で、株主・投資者の皆様に当社の成長戦略をご理解いただけるように努めてまいります。
このように当社は中期経営計画を遂行することで、資本コストやROEを重視した経営を実践し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
また、当社の成長性に対する市場の評価についても、株主・投資者の皆様のご期待に十分お応えできるよう、「2.計画の策定」の「課題に対する対策」で述べた施策を着実に実行してまいります。